「1人ではさすがに危ないって!」
「うん、僕も、カイリー1人は心配」
「じゃあ誰かついてけよ」
あくまで「誰か」であって、初めから自分は行く気ないんですね。
天兒さんらしい。
「ひつじとか、女装すりゃいけんだろ」
「……は?」
さ、さ、殺気!
ひつじくん!殺気漏れてるよ!?
どす黒い低音に天兒さんが怖がる素振りは一切なく、むしろどこか楽しそう。
「女みてーな顔してるし肩幅せめーし、化粧してドレス着りゃ見れなくはねぇんじゃねーの?」
「やめて!」
殺気の代わりに、悲痛めいた叫びが放たれた。
「僕、嫌だから。女装なんか、しない。女の……かわいい格好なんか……」
「い、いいよ!無理しなくて!」
わざと遮った。
これ以上聞きたくない。
言わせたくない。
苦味でいっぱいの憂いた声色は。
「わたしが言い出したことだし、わたし1人でやるよ」
「カイリー……」
「海鈴ちゃん、本気?」
「本気だよ。わたしは1人で大丈夫。心配してくれてありがとう」
これはわたしの自己満足のためだから。
無理して付き合う必要なんかないよ。
やる気満々に笑ってみせる。
何か言いたげの褐色の眼が暗く伏せられたのを、見落とさなかった。
「それより問題は衣装なんだよね」
話題を変えて、異論を受け付けない。
「キャバクラで着てるような服、持ってないし……」
地味に一番悩んでる。
どうしよう。
レンタルとかできるのかな。



