かわいい戦争




おもむろに視線を前にずらしていく。


刹那



「さっさとよこせよ、それ」


「グハッ……!」



路地のほうから長い足がぬっと伸ばされたかと思えば、ふっ飛んできた男性のみぞおちを蹴り上げた。


え。
これは。

この状況は。



何?



前方からピリッとした何かを感じた。


皮膚にまとわりつくその何かは、心臓ごと押し潰す。



怖い。



あぁ、そうか。

これは……この何かは、殺気というやつか。


心臓が震えあがっている代わりに、脳は意外にも冷静に働いていた。




「おら、よこせって」


「……っ、」



男性はみぞおちを抑えながら、恐る恐る片方の手を上げていく。


その手には、一眼レフカメラが。



「最初からおとなしくそうすりゃよかったんだよ」



ハスキーボイスと、渇いた笑い。

路地の薄暗さと相まって、ひどく冷ややかだ。



男性のみぞおちを痛めつけた足が、日の当たる地面を力強く踏んづける。


路地を抜けて目の前に現れたのは、パーマがかった柔らかそうな黒髪の男の子だった。



センター分けの前髪のおかげで、顔がはっきり見える。

恐ろしいくらい整った顔立ちが。



180センチは軽く超えてそうな高身長は、ただでさえ存在感のある雰囲気をさらに高圧的に仕上げていた。



「だからって蹴るなよな。そういうのは最終手段つったろ。お前なら脅すだけで十分威圧できんだし」


「うっせーな。いいじゃねぇか。結果オーライだろ」



あ、もう一人出てきた。

黒とグレーのストライプ柄のターバンを巻いてる、紫色のツンツンした髪の毛。


今度はわたしと変わらないか、ちょっと高いくらいの小柄な身長の男の子だ。