かわいい戦争




素通りしようとした細い路地から、急に、本当に急にひとつの人影がこちらに吹っ飛んできた。



「え……えええっ!?」



やばい!

本能が警報を鳴らしたときには、既に遅い。



迫り来る男性の背中を避けられず、ただただ足を竦ませていた。



……あっ!
そうだ、卵!

守らなきゃ!!



思考回路は「卵」の一文字で埋め尽くされていた。




――ドサッ!


「ぅぎゃっ」




謎の男性の背面が、顔面にクリティカルヒット。


マスクは何のクッションにもならず、鼻を強打した。



卵の入ってるエコバッグを自分の身よりも優先し、抱きかかえた形で、男性と共に地面に倒れ込んでしまった。



「いたたた……」



鼻だけじゃなくて、お尻も痛い。

もう、一体何なの。



……って、そうだ!卵!

無事!?


慌てて中を確かめたら、1つも割れていなかった。



「ふぅ、よかった……」



いや、待て、わたし。

何もよくない。


そうだ、そもそもなぜに人が飛んできた!?



斜め横で尻もちをついている男性を、ジロリと睨む。


しかしその男性は「痛い」の一言を上げるどころか、目の前の一点をじっと見据えて、ぶるぶる戦慄していた。



正面に一体何が……。