「んじゃ、そろそろ帰るか~」
「だな。道が混む前に行こうぜ」
未來くんと勇祐くんは、バイクを停めた方向へと歩き出す。
遅れてわたしと天兒さんも足を動かした。
しかし、
「……ひつじくん?」
会場前を離れようとしないひつじくんに気づき、わたしたちは立ち止まる。
「ひつじ、行くぞ」
「やだ」
「わがまま言うな」
いつもわがまま放題な天兒さんが、そう怒ることに違和感を覚えるのはわたしだけだろうか。
「まだ、りったんに、会ってない」
「ライブ後だし、璃汰ちゃんも疲れてるんじゃないかな~?」
「どうせ会えねぇし、会ってもすることねーだろ」
未來くんと天兒さん、言い方がまるで違う。
未來くんは優しいけど、天兒さんは面倒くさそう。
2人の説得にひつじくんが渋々歩き出そうとした直後。
「リタちゃん、かわいかったな」
会場前はライブ終了後も大勢の人で賑わっているというのに、なぜかはっきり聞き取れた。
あの野太い声だけは。
それは他の皆も同じだったようで。
ひつじくんの足は、止まっていた。



