青春……この言葉を聞くと人々は何を思うのだろうか。

たくさんの友達、笑い声の絶えない教室、落書きが描かれた教科書、汗を流しながら懸命に行う部活、そしてーーー誰かとの恋。

これは、ある男子高校生の物語ーーー。



「……あっちぃ〜」

夏休みが終わって一週間。まだまだ気温は高く、外にいると溶けてしまいそうな暑さが続いている。

高校二年の斎藤(さいとう)かけるは、ダラダラ流れてくる汗を持っているハンカチで拭く。みかんの髪飾りをつけたかわいい女の子がプリントされたハンカチだ。

かけるは小説や漫画で知る青春とは、全く無縁の人物である。少女漫画に出てくるようなイケメンではなくぽっちゃりした体型だし、青春といえる部活も帰宅部だ。さらに、友達と話すことといえば最近流行っているゲームやアニメの話。……そう、かけるは典型的なオタクだ。

ちなみにかけるの好きなゲームは、パズ○ラやポケ○ンといった多くの人がしているゲームではない。

「山口くん!数学の宿題できた?」

「私、二番の問題できなくって…」

かけるの前を、青春を謳歌している男子が通っている。イケメンで、背も高くて、女子に囲まれてかけるにはなんとも羨ましい世界だ。