「最初はどうせすぐ飽きるって放置してた。でも、日に日にエスカレートして、待ち伏せされたり、家に押しかけてきたり、ポストに大量の手紙が届いたり、その中に一緒にカッターの刃が入ってたり」


"極めつけは、血のついたカッター"


そう言いながら深く息を吸い込んだ佐倉に、ゾッとした。


「血、って?」

「俺に振られたショックから自分を傷つけるようになったって、届く手紙にはいつも書いてあった。嘘じゃないって証拠のつもりだったんじゃね?」

「……そ、そんなの。逆恨みもいいとこだよ」

「そのうち、学校中に俺の悪い噂が流れた。

"親友の好きなやつに手ぇだして、挙句飽きたらばっさり捨てた"とか、"女取っかえ引っ返してる"とか、"暴力団と関わってる"とか。

噂の中の俺は、人も何人か殺してたっけ。

それを信じた春田は簡単に俺から離れてった。……気付けば誰も俺に近寄らなくなって、学校に居場所はなかったし、相変わらずストーカー行為は続いて」


「生きた心地がしなかった」そう言った佐倉は、今まで見た中で1番悲しそうで。


「って……ばか、なんで松永が泣くんだよ」


こんなの泣くなって方が、無理だよ。