「夏休みも会えるなら、俺は嬉しいけど」
「……っ、」
いつからだろう。
私と目を合わすくらいじゃ、佐倉の顔は赤く染まらなくなった。
「それは芽唯に会えるのが、ってことでいい?」
「またすぐそういうこと言う〜!」
一瞬、ドキリと跳ねた心臓。
自分でも佐倉が私に向けて言ってるみたいに錯覚してしまったから。
すぐに萌菜にからかわれて、冷静なフリして言い返すけど。
内心、まだドキドキしてる。
萌菜の冷やかしにも佐倉はすまし顔で、これと言って否定もしない。
「そう言えば、2人が付き合ってるって噂。まだ落ち着いてないんでしょ?いいの?」
そんなことを聞きながら楽しそうに笑う萌菜。
いいの?も何も、私と佐倉を盛り上げようと奮闘してるくせに、よく言うよ。
「……噂は噂に過ぎねぇだろ。実際、付き合ってねぇし。それをいちいち弁解する方が不自然」
「まぁな!2人して付き合ってるやつもいないし、言われて困ることもないしな〜」
みんながみんな、佐倉が女性恐怖症ってことを知ってるわけじゃない。むしろ、臨海研修で班が一緒だった私たちくらいしか知らないと思う。


