「ちょ、萌菜!」
「……ってのは口実で、私がテツに会いたいんだよね」
急に小さくなった萌菜の声は、恋する乙女そのもので。そんな顔されたら協力したくなってしまうから困る。
それに、私が佐倉に会いたいってやつも……あながち間違ってない。
「……やろうか、佐倉の歓迎会」
「そう来なくっちゃ!そうと決まれば……テツ!ちょっと来て!佐倉も」
私が諦めたように呟くのが早いか、萌菜はクルッと後ろを振り向いて私の席とほぼ対角線にあるテツの机に向けて叫ぶ。
おまけのように付け足された佐倉は、私たちの方へと顔を向けながら、”ん?”とでも言いたげに顔を傾げた。
「夏休み、佐倉の歓迎会したいなって。芽唯が!」
「え、あたし!?」
萌菜の発言は、予想外が多すぎる。
ビックリして目を見開いている私にはお構いなしに、テツは「おー!いいじゃん」なんてノリノリで。
駆け足気味に私の席までやってきた。
そんなテツのあとを追うように、ゆっくりと歩いてきた佐倉は私の前まで来て足を止めて
「さ、佐倉はどう?」
真っ直ぐ私を見る。


