サラサラ揺れる髪。
窓から差し込む日差しが、その黒髪をほんのり赤く染める。
まるで照れてる時の佐倉みたいだな、なんて。
こうして改めて見ると、やっぱり佐倉はカッコイイ。
いつも不機嫌そうに口角は下がってるけど、ふとした時の笑顔はびっくりするくらい優しいし。
……女性恐怖症じゃなかったら、絶対モテモテだ。
佐倉のお兄ちゃん、佐倉に女の友達がいるとは思わなかったって言ってたっけ。
あんなにも露骨に私を敵視するあの瞳を思い出すと今でも少し震える。
……もしかしたら、佐倉が女性恐怖症になったのには何か理由がある?
だから、佐倉のお兄ちゃんは私にあんな態度を取ったのかな。そうだとしたら、全部辻褄が合う。
前の学校で、女子と何かあったのかな。
……聞きたいけど、もしこの憶測が本当ならきっと、佐倉にとっては思い出したくもない過去のはずで。
私の好奇心が踏み込んでいいところじゃないのは、分かり切ってる。
───バチッ
「っ、」
あんまり見つめすぎたせいで、横を向いた佐倉と目が合った。
口パクで「み」「す」「ぎ」と言われて、返す言葉もなく、恥ずかしさから慌てて目を逸らした。


