「分かったら、もう帰れ」
───ガチャッ
最後の言葉と同時に、もう開くことはないとばかり思っていたドアが、重々しく開いて
「……松永?」
目の前にいる男の人と、こんなにも似てるのに全然違う、
私を優しく包みこむような声で呼んだ佐倉に、どうしようもなくホッとしてしまう。
「海登、俺が追い返しとくから、お前は中で休んでろ」
コホコホと咳き込みながら、ダルそうにドアに寄りかかった佐倉を支えるように手を伸ばした男の人は
尚も私を敵視する。
……素直に、怖いって思う。
「あの、ハルミチに頼まれてちょっと顔見に来たんだけど……フラフラなのに起こしてごめん」
声が、上ずって少しだけ震える。
”もう帰るね”って早口に告げて、早くこの場から離れたいって思ってる私の体が1歩、2歩と後ずさった。
「なにが顔見に来た、だよ。そういうの」
「兄貴!……松永はちがう」
突然、大声を出した佐倉に隣にいた男の人も、私も、驚いてビクッと肩が震えた。
「ちがうって……」
「……コイツは、俺の友達」
「っ、」
ハッキリと私の目を見て”友達”って言った。


