もう、我慢すんのやめた




……さっきの出来ごとはあまりに情けなすぎて、佐倉には言いたくないから、涙に気付かれなくて良かったな。

なんて思いながらローファーに足を入れた。


のに、


「で、なんで泣いてんの」

「へ……!?」


なぜか泣いてること、サラッとバレてるし。
しかも佐倉も外履きに履き替えてるし。


なんで気付いちゃうかな。
やっぱり、女の子にモテないよ?

いや、むしろ好きな人にはちょっとしたことにも気付いて欲しいものなのかな?


その面で言えば、佐倉かなりモテるかも。
早く女性恐怖症なんて治ればいいのに。

顔だって、よく見ればかなり整ってる。
クリっと綺麗な二重幅、スーッと通った高い鼻。
左目の下にある泣きぼくろは、個人的に高ポイントだし。

羨ましいくらい形のいい唇、


くち、びる……


ふと、さっきの弥一との出来事がフラッシュバックする。


……もう、戻ってこないファーストキス。
さっきは弥一でよかった、なんて思ったけど。


私のことを好きだって言ってくれて


私も好きだなって思える


そんな人に捧げたかった、なんて。
今となっては思う。