もう、我慢すんのやめた



***


『弥一なんか、1人でボロボロになればいい』


そんな言葉を吐き捨てて、弥一に背を向けた。
……考えてみれば、私から弥一に背を向けたのは初めてかもしれない。


いつもがむしゃらにただ、弥一のことを追いかけてばかりだったから。


まさか、弥一があんなことするなんて


夢にも思わなかった。



「……ばっかみたい」


この期に及んで、初めてのキスが弥一で良かったって思ってる。


泣くな、泣くな、って暗示をかけて
生徒玄関に向かう足は微かに震えている。


「……ばっかみたい」


口から出るのは、繰り返し同じ言葉。
こんな時に、こんなことしか言えないなんて。


ほんと、私って


「ばっかみたい……」


もしかして弥一に告白されるのかも?とか。
私たち新しくスタートできるかもとか。
幼なじみとしてまた傍にいられるかもとか。

……そんなことばっかり考えてた。


会ってしまえば、弥一の優しさに絆されて
私の中の”好き”が完全に目覚めるとさえ思ってた。

それが、怖かった。


もし、また私の片想いだったら……。
今度こそ私の心は跡形もなく粉々になりそうで。