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『弥一なんか、1人でボロボロになればいい』
そんな言葉を吐き捨てて、弥一に背を向けた。
……考えてみれば、私から弥一に背を向けたのは初めてかもしれない。
いつもがむしゃらにただ、弥一のことを追いかけてばかりだったから。
まさか、弥一があんなことするなんて
夢にも思わなかった。
「……ばっかみたい」
この期に及んで、初めてのキスが弥一で良かったって思ってる。
泣くな、泣くな、って暗示をかけて
生徒玄関に向かう足は微かに震えている。
「……ばっかみたい」
口から出るのは、繰り返し同じ言葉。
こんな時に、こんなことしか言えないなんて。
ほんと、私って
「ばっかみたい……」
もしかして弥一に告白されるのかも?とか。
私たち新しくスタートできるかもとか。
幼なじみとしてまた傍にいられるかもとか。
……そんなことばっかり考えてた。
会ってしまえば、弥一の優しさに絆されて
私の中の”好き”が完全に目覚めるとさえ思ってた。
それが、怖かった。
もし、また私の片想いだったら……。
今度こそ私の心は跡形もなく粉々になりそうで。


