だけど、
「弥一?……ど、どうしたの?」
ちがう。
私が知ってる弥一と、何かがちがう。
「芽唯が、下の名前で呼ばれてんのも。芽唯が他のやつを下の名前で呼んでんのも……気に入らないって言ったらどーする?」
「な、に……言ってるの?」
私の手を優しくすくって、弥一が指を絡める。
身体中が心臓になったみたいにドキドキして
思考回路なんてとっくにぶっ飛んだ。
「俺、別れたよ」
「……それはこの間、聞いたけど」
「芽唯は、もう俺のこと好きじゃない?」
「……っ!!」
弥一の言葉に、背中を冷や汗が伝う。
”もう”の意味が表しているのは……きっと。
弥一が、私の気持ちを
「芽唯、俺のこと好きだったろ?」
「っ、」
ずっと前から知ってたってこと。
「あ、図星。……今は?」
「や、弥一……?ねぇ、これ何の話?昔話しならまた今度ゆっくり」
「昔話?芽唯の中の俺、もう過去になった?」
繋いがれた手をグイッと引き寄せられて
簡単に弥一の腕の中に閉じ込められる。
「や、いち……、離して」
弱々しい抵抗しかできない自分が情けないけど。
このまま弥一に流されるのは違うって思う。


