もう、我慢すんのやめた


「そんな泣きそうな顔すんなら、行くのやめれば」


……なんで?って思う。


だるそうにリュックを肩にかけて
教室の入口から私を見てる佐倉。


別に私のことなんてどうでもいいって顔して
……私のこと見透かすの、やめて欲しい。


「え、やだな、私、泣きそう?」


ハハッと乾いた笑いを零して必死に繕うのに。


「ヘラヘラすんな」


佐倉はまったく、容赦ないなぁ。
もっと優しくなくちゃ女の子にモテないよ?


いつもなら、軽口の一つや二つ、言えるのに。
今の私には、そんな余裕すらない。


ダサいなあって、自分で自分に呆れる。


「……いよ」

「は?」

「佐倉には関係ないよ!」



転校初日の佐倉に言われた言葉と


───"お前に関係ねぇだろ"



あの日、私が佐倉に言った言葉を思い出す。


───"人の親切をそんな言葉で突き放すのはどうかと思うよ?"



最悪だな、私。
人には偉そうに言っておきながら、自分だって同じことしてる。


……ううん、本当は引き止めて欲しかったくせに。
佐倉が呼び止めてくれたこと、嬉しかったくせに。


素直にそう言えなかった私は、
あの日の佐倉よりずっと幼稚だ。