もう、我慢すんのやめた



階段をゆっくりゆっくり
足音を立てないように降りれば


非常口のマークだけが緑色に光る廊下に出た。


なんでこんなスリルを味わってまで
男子の部屋で枕投げする必要があるわけ?

ってのは……。


言ってしまえば元も子もなくなるから
言わないことにした。


こういう学校の行事の中でも
好きな人と同じ建物に寝泊まりする今回みたいなビックイベントでは特に


グッと距離を縮めたいっていう乙女心は
恋愛には疎い私でも分かるつもりだし。


萌菜に協力してあげたいって気持ちが、今私をモアイの恐怖に負けないよう奮い立たせているのは間違いなくて。


……こうなったら、何がなんでも
萌菜とテツにはくっついてもらわないと!!


いつまでも鈍いこと言ってるようなら、テツのことモアイに突き出してやる。


「……あ、ここだよ!早く早く……!」

「シッ、声大きい!!」


テツたちの部屋番号を見つけた萌菜が、興奮気味に私と紗蘭ちゃんに手招きする。


ったく、そんな声出したらモアイに気付かれるっての!!


「ごめん、つい……!」

「バレてないかな?」


ドアの前までたどり着いた私たちは、
挙動不審に周りを見渡す。