もう、我慢すんのやめた


そんな全力で嫌な顔しないでよ。
お気に入り、ってことにしとけばいいじゃん。


「ご指名ありがとうございます、芽唯です」

「……指名してねぇよ」


"アホくさ"なんて言いながら、佐倉が少し笑った。
ちょっとずつ、みんなと打ち解けてる佐倉を
素直に嬉しいなあって思うのは親心的なやつ。


やっぱお節介だって言われるかもだけど


佐倉に早くみんなと仲良くなって
毎日、学校楽しいなって思って欲しい。


「佐倉、言っとくけど芽唯は私のだからね」

「……」


萌菜の言葉に、上手く返事ができない佐倉に
呆れたように萌菜が肩をすくめた。



「本当に芽唯としか話せないわけ?極端すぎ」

「萌菜は女子って認められてるってことじゃん。私、女子じゃないらしいから。ね、佐倉」


そんな佐倉をフォローするように
少し自虐に走る。


「頭に浮かんだ返しが声になんねぇんだよ……、悪気は」

「はいはい、ないんでしょ。分かってる」


萌菜の言葉に、心做しか佐倉がホッとしたように見えた。


女性恐怖症ってのは、私たちが思ってるより
そう簡単じゃないのかな……って

佐倉を見てると思わされる。


無理に治すんじゃなくて
これが佐倉だっていうなら、受け入れてあげればいい。それだけの話なんだけど。