もう、我慢すんのやめた

***

"考えとく"

たったそれだけのことを、妙に嬉しいなんて思ったりしながら

佐倉と並んで砂浜に戻った。


もうすぐ夏休みだねとか
夏休み前、最後の砦であるテストが嫌だとか

少しずつ佐倉がクラスに馴染んできたとか


だけどやっぱり女性恐怖症は相変わらずだねとか


そんな話を一方的に繰り出す私に、
佐倉は3回に1回くらいの頻度で答えてくれた。


どれも無愛想で、ぶっきらぼうな言葉。
短くて、単語単語でぶつりと切れる、カタコトな返事。




「ちょっとー!芽唯ってば、どこ行ったかと思えば佐倉と2人で何してたのよ」



もう着替えまで済ませたらしい萌菜が、私たちを見つけるなり大声を出す。

その言葉に、周りの視線が一気に私と佐倉に集まった。



カァッと頬が熱を持っていく。


「ちょ、ちょっと!誤解を招く言い方やめてよね」

「だって、2人きりだったんでしょ?ラブの1つや2つあってもよくない?」

「バカ言わないで。女性恐怖症の佐倉と2人になったって、何も起こらないよ」

「……えー、つまんない」


なんて。本当につまんなそうに呟く萌菜。