「っ、……あ、職員室!私、数学係だからワーク取りに行く途中だった」
「もう時間ねぇんじゃね?」
「や、やっばい!急がなきゃ……!あの、本当にありがとね」
冗談って言われたら、それ以上何も言えない。
ムキになって言い訳するのもおかしな話だし、佐倉が気にしてないって言うなら私がどうこう言う必要はない。
分かってるのに、モヤモヤする。
佐倉はもう、私のこと……忘れちゃったかな?って。めんどくさい女スイッチが全開で嫌になる。
何を女々しく考えて悩んだところで、私が弥一のそばを選んだあの時から、佐倉の元に帰る術なんてひとつもないって言うのに。
「じゃ!」と勢いよく歩き出した私。
これでまた、次に話せるのがいつになるか分からないっていう名残惜しい気持ちが、歩き出した私の後ろ髪を引く。
友達に戻ろうとすればするほど。
離れようと思えば思うほど。
友達なんかじゃないって強く思い知らされた。
そばにいればドキドキして苦しくて、離れてしまえば寂しくて、暇さえあれば探してる。
見つけてしまえば目で追って、他と仲良くしてたら不満で。
私だけ、見てて欲しいなんて。
───こんなの、友達なわけがない。


