もう、我慢すんのやめた



女の私から見ても、うんっと綺麗な人。
でも、どうして私のこと知ってるんだろう?



「あの、なんで私のこと……」


不思議に思ったことをそのまま声に出す。
けれど、その女の人は眉一つ動かさなくて


聞こえできたのは、


「私は谷川茉佑(たにがわまゆ)。本田弥一の元カノ」



酷く冷たい、乾いた声。



「弥一の……元カノさん」

「そう、元カノ。あんたのせいでね」

「え……?私のせい?」


とても鋭い言い方をする茉佑さんに、ズキッと胸が痛むのを感じる。


ギュッと握りしめられた茉佑さんの拳が、怒りに震えてることくらい、私にも見て分かるけど


それが、何に対する怒りなのかが分からない。



「みんな、私が弥一を振ったんだって思ってる。きっと、弥一ですらも」

「……違うんですか?」



確かに、弥一は『振られた』って言ってた。
だから、私もてっきりそうなんだとばかり思ってたけど。違ったの、かな?


「……ムカつく。自分は何も知らないみたいな顔して、平然と他の男をたぶらかしてるんだから」



トゲのある言葉に、体が嘘みたいに動かない。