もう、我慢すんのやめた


佐倉が見えなくなってからきっとまだ1分も経ってないのに、私はもうすっかり寂しくなってきた。


裏口購入ってことは、上手く買えれば5分もかからずに帰ってくるはずなんだけど。


正規ルートに正されて、あの行列に並び直す佐倉が想像できなくもないのが現実だ。

そうなったら、たこ焼きは諦めてこの際、比較的空いてそうなものでいいから、佐倉と一緒にいたいなぁ……なんて。


「乙女すぎて、自分きもい」


ぼんやりとそんなことを呟いて、ベンチに座りながらたこ焼きの屋台へと視線をむける。


やっぱり、一緒に行けばよかった。
こんな短い時間も1人で待ってるのが寂しいなんて、私は余程どうかしてる。


今からでも佐倉のこと追いかけよう、そう思ってベンチから勢いよく立ち上がった私は



「松永芽唯さん、だよね?」


聞こえてきた声に反射的に顔を上げた。



「……はい、そうですけど」



色白で、顔のどこをとっても綺麗な顔。
キリッとした凛々しい眉。

切れ長で儚げな瞳、スーッと通った高い鼻。

薄くて形のいいくちびる。


胸まであるミルクティブラウンの髪が、この暑さに負けずサラサラと揺れる。