もう、我慢すんのやめた



「たこ焼きでいいんだな?」

「え?あ、うん……」

「買ってくるからここで待ってろ」

「え?一緒に行くよ」

「すげぇ並んでるし、まともに並んでらんねぇよ。裏から買ってくる」



なるほど。確かに、佐倉はたこ焼き組だから顔がきくわけだ。でもそれって……ちゃんと順番守って並んでるお客さんに悪い気もする。


「それ、かなりセコい」

「ハッ、なんとでも言え」


ベッと舌を出して"行ってくる"と歩き出す佐倉の後ろ姿に、今さらドキドキしてる。


好きな人と文化祭を一緒に回る。
それが、こんなにも嬉しくて、楽しくて、幸せなんて知らなかった。


「佐倉!」


もう随分、人混みに流された佐倉を、大声で呼んでみる。


直ぐに足を止めて振り向いてくれた佐倉に、"よかった"って。"ちゃんと届いてる"って勝手ににやけてく頬。


顔だけで「なに?」と聞いてくる佐倉に、またまた大きな声でめいいっぱい叫ぶ。


「早く戻ってきてね!!」



私の言葉に、フッと佐倉が笑ったのが見えて、返事はないけどちゃんと伝わったんだなって思えた。

戻ってきたらまた、手……繋いでくれるかな。