もう、我慢すんのやめた



「でも、」

「……ちょ、さ、佐倉?」


繋いだまま絡んだ指、少し強引に引き寄せられて熱を持った身体。

トクトクと、佐倉への気持ちを奏でる心臓。



相変わらず顔は赤いけど、どこか私よりも余裕気な佐倉の表情を悔しく思う。



ガヤガヤと賑わう校内で、私と佐倉の間だけ時間がゆっくり流れてるみたい。

周りから見れば、廊下でイチャつくバカップルだろうな〜とか。恥ずかしいなとか。そんな気持ちだって確かにあるのに


佐倉にまっすぐ見つめられたら、動けなくなった。



「俺がこうやって触れられるのは今んとこ芽唯だけだし、安心すれば」




多分、私はとっくに……


佐倉を”好きになりたい”んじゃなくて。



そんな、無理矢理な気持ちじゃなくて。
自分でも知らないうちに、自然と。



気付けば、もう佐倉のことが好きなんだ───。



「い、……今んとこって」


先のことは確かに分からないし、この先、佐倉がすっごく好きになれる子が現れるかもしれない。


それは確かにそうだけど。


でもせめて今だけでも、ただ『芽唯だけだよ』って言って欲しかったな……なんて思うくらい。


私は、どうやら佐倉を独り占めしたいらしい。