大広間。

 玉座が2つ並んでいる。
 
 大広間の大きなガラス窓から、外を見ている1人の男性がいる。

 妖精界の王フェリーチェスである。

 ガッチリとした長身で、グリーン系のスーツに黒い靴。

 優しいブラウンの髪に、堀の深い顔をしている。

 威厳のある厳しい目をして、口ひげを生やしている姿は、妖精界の王としての凛々しさが表れている。



 キーッ・・・。


 大広間の扉が開くと、フェリーチェスは振り向き扉の方を見た。


「貴方、ノエリが帰ってきましたよ」

 ファリヤの声に、フェリーチェスは目を潤ませた。

「お父様。・・・」

 
 20年以上も会っていなかった親子。

 だが、こうして顔を見ると離れていた時間は一挙に縮まってゆく。



「ノエリ・・・」

 厳しそうな表情とは違い、とても澄んだ声をしているフェリーチェス。


 ノエリに歩み寄ると、ギュッと抱きしめるフェリーチェス。

「お帰り・・・ノエリ。・・・」

 
 ギュッと抱きしめられたフェリーチェスの腕の中は、昔と変わらず暖かく、懐かしい父の臭いがした。


「お父様・・・。ごめんなさい、ずっと連絡できなくて・・・」

「もういい。全てお母さんから聞いている。お前がこうして戻ってきてくれた、それだけで十分だ」


 涙ぐんでいるノエリを見て、フェリーチェスはギュッとノエリの鼻をつまんだ。

「痛い」

「まったく、旦那様の前で泣いたりしたら心配するじゃないか」


 フェリーチェスはジックニーを見た。

 目と目が合うと、ジックニーは頭を下げた。


「初めまして、ジックニーです」

「初めまして、ノエリの父フェリーチェスです。娘がすっかりお世話になってしまい、申し訳ない」

「いいえ」

 フェリーチェスは、ジックニーに歩み寄った。