~竜斗side~
咲が居なくなってから、俺は、どうしたら明るく元気に過ごせるか、分からなかった。
違うか、そんなことを出来るはずがなかった。
二週間程は自分の部屋から一歩も出られなかった。
でも、その時に、思ったんだ。
咲は俺の何倍も辛い思いをしているのではないかなって。
だから、俺が信じなくてどうするんだって。
学校に来るかもしれないって信じなくてどうするんだって思った。
だから、どれだけ俺が辛くても学校に行くことにした。
咲が来ると信じて。
でも、現実は、そんなに甘くはなかった。
学校に行っても咲はいないし、花に告られるし。
花の告白はもちろん断った。
でも、あいつはそんなことで諦めてはくれなかった。
花は最終兵器を使ったんだ。
『私と付き合わないと柿崎さんがどうなるか分かる?』
って。
そんなことを言われたら断れるはずがなかった。
咲が前みたいにいじめられて、悲しい顔をするのは、咲も俺も絶対にいやだから。
花は積極的だった。
周りから見るともう、咲よりもカップルっていう感じが出ていただろう。
でも、俺は好きにならなかった。
なれるはずがなかった。
だって、咲の事しか考えられなかったから。
いや、今も咲しか見てないし。
ずっと待ってた。
咲が帰ってくるって、信じてた。
そんな時、花は、
『柿崎さんが来ても、私たちはラブラブにしようね。』
って。
『もし、しなかったら、柿崎さんに何するか、分かってるよね。』
って。
最初は、こいつ何言ってんだよって思った。
でも、いざ会ってみるとなると、弱い俺には本当の気持ちを伝えることが出来なかった。
咲、好きだよ、会いたかったよ、って、言いたかった。
言いたかったけど、言えなかった。
咲ごめんな。
もう、こんなこと、したくない。
でも、するしか咲を守る方法が見つからなかった。
俺は馬鹿だから、それ以外の方法を見つけ出す事が出来なかった。
それで、俺はずっと咲を傷つけていたなんて、考えることが出来なかった。