運命ノ黒イ糸

☆☆☆

家に戻ってからはようやく安心できた。


今日は佐恵子が家まで送ってくれたから大丈夫だったけれど、今後どうなっていくかわからない。


いくら冷たい態度をとっても、キツイことを言っても高原はメゲない。


あたしから引き離すことは難しそうだ。


いつまでも佐恵子に守ってもらうわけにはいかないし、どうにか策を考えないと……。


そう思った時、再びハサミが視界に入った。


昨日この糸を切ってしまおうと考えた自分を思い出す。


あの時はタイミングが悪くて切れなかったけれど……。


あたしはそっとハサミを握りしめた。


いつも使っている文房具なのに、今日だけは特別鋭利な刃物のように感じられた。


「運命の糸を切ったって、別に平気だよね……?」


あたしはそう呟いて、赤い糸にハサミを入れたのだった。