運命ノ黒イ糸

「あなた、もう出勤時間よ」


「あぁ、そうだった。今日は早出だったな」


「行ってらっしゃい。朱里、なにボーッとしてるの? 早くご飯食べちゃいなさい」


『運命の王子様』


『縁結びの神様』


『運命の赤い糸』


そんな言葉が一瞬にして頭の中にめぐり出した。


この糸の先にいるのは……?


「ごめんお母さん、今日はご飯いらない!!」


運命の相手がいるのなら、1秒でも早く会いたかった。


「あ、ちょっと朱里!?」


あたしは母親の言葉を無視し、こけそうになりながら階段を駆け上がったのだった。