運命ノ黒イ糸

☆☆☆

「少し殴ったら別れるのって、どうして?」


輝明は玄関の鍵をかけながら、あたしにそう聞いて来た。


「殴られるのは誰だって嫌でしょ?」


「嫌? なんで?」


「なんでって……」


反論しようとして、言葉を失った。


あたしに質問をしてくる輝明は、本当に理解していないようで、首をかしげているのだ。


「本当にわからないの? 嘘でしょ?」


殴られたら痛い。


心も傷つく。


そのくらい、当たり前だ。


「暴力って、愛情表現じゃない?」


輝明はそう言い、突然Tシャツを脱ぎ始めたのだ。


「ちょっと、なにしてるの!」


慌てて止めようとした時、あたしの目に複数の傷痕が飛び込んで来た。