「なに?」


「ううん、なんでもない」


そう答えて2人で公園を出た。


その瞬間だった。


「しっかし笑えたよなぁ寺島の私服! あんなダサイのよく着るよな」


そう言って大声で笑い始めたのだ。


「なに言ってるの?」


あたしはすぐに振り返り、佐恵子と寺島がいないのを確認した。


そんなに大声を出したら聞こえてしまう。


「だって見ただろ? あのモサーっとした恰好!」


確かに、寺島は輝明に比べればパッとない。


でも、大笑いするほどヒドイことはなかった。


「もう、やめなよ。佐恵子の彼氏だよ?」


「なんだよ。ああいうのが好きなワケ?」


「なに言ってんの?」


あたしは寺島が好きだなんて一言も言っていない。


慌てて否定しようとした瞬間、唇を塞がれていた。


「お前はもう俺の女だ。わかったな?」


至近距離でそう言われ、少しの恐怖を感じたのだった。