聞き覚えのある声に、トクンと胸が鳴った。


でも、おかしい。こんなところにいるわけない。そう思いながら、顔を横に向けると。


「……なんで」


そこには、普段は私に背中を向けてばかりの彼が少しニヤついた顔でこちらを見ていた。


なんで、菅原がこんなところにいるんだ。


スラッと高い背に、少し癖っ毛の黒髪。


目元の涙袋にあるホクロが、中学生とは思えないほどの色気を醸し出している。



「遅刻だよ、菅原」


目を窓の外に向けながらそう言って再びメロンソーダを口に運ぶと、『こっちのセリフ』という声とともに、ギーと何かが引かれた音がした。


え?


なに?



音の原因を確かめるべく、顔を上げると。



Mサイズのホットコーヒーをテーブルに置いた菅原が、私の目の前に座って頬杖をついていた。