目の前にみな美の姿が見える。

あ、みな美って、本当に美人。

くっきり二重で、まつ毛が長くて、鼻が高くて、韓国アイドルみたい。羨ましいなあ。

「何言ってるの、咲希の方が可愛いくせに」

みな美に可愛いって言うと、絶対こう言われるんだよね。

みな美の顔が突然消える。

次に現れたのは、山田君だ。

「よく見たら、立花っち、整った顔してんじゃん」

よく見たらとか、レディに対して失礼極まりない。

山田君、そんなに私に媚びた所で、みな美は絶対に振り向いてくれないよ…

山田君の姿が消え、現れたのは、あの時の、男の子。

「暇なら、パス練、付き合えよ」

あ、あの子。

名前、何だっけ。

ひとりぼっちの私に、声をかけてくれた、あの子…

「待って、行かないで…」

向こうに走っていく男の子に手を伸ばすが、男の子の姿はみるみる小さくなっていく。

「名前…あなたの、名前は…?」

私は必死に手を伸ばすが、男の子の姿は見えなくなっていた。

その時、真っ白な空間が突然暗闇に変わる。

「怖い…助けて、誰か!!」

声を張り上げるが、周りには誰もいないようだ。

「嫌だ、怖い、怖いよぉ…」

私は亀のように背中を丸め、頭を抱え込む。

瞳からは大粒の涙が溢れ返っているのを感じる。

「助けて…ジュンくん」

そう言ってすぐ、え、と涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げる。

ジュンって、誰だっけ。

「大丈夫。俺が守ってやるから」

あの男の子の声が、どこからか聞こえる。

「もっと自信持って生きろよ」

これは…誰の声?