「そうですね・・・ありませんけど・・・あの家を出ますよ」


沙羅は目を伏せる。



「12年前・・・沙羅は俺の妹夫婦に捨てられて・・・大きくなったな」


幸也は沙羅を見ずに庭を見ていた。



「流石に・・・2年前は驚きました。秋冷が次期当主に決まってましたからね
まぁ、2人には会ったことは無かったんですけどね」


沙羅は小さく笑って言った。



「沙羅が2年前、俺も此処に来たのは驚いたよ。沙羅が【夜蝶】って言うこともね
それに・・・月の巫女って言う事も」



幸也は沙羅に視線を戻す。


沙羅は


「私は・・・月の巫女と言う事を誇りに思ってるよ。勿論【夜蝶】としてもね」



夜蝶―沙羅は、妖魔たちからそう言われている。



「でもね?当主たちが知らない異名も持ってるんだよ?
【闇夜の死姫】って名前をね?知ってるでしょ?」


沙羅は当主を見る。


当主だけでなく、紅燐も驚いていた。



「【闇夜の死姫】・・・?」


【闇夜の死姫】―癒しの姫と反対の意味を持つ異名。



「そう。影でいろんな術師の間で言われてる」



そう・・・時には麗夜や樹里に海斗・・・芽衣や朔夜に大輝までもが。