「おう」
「おう。来たよ」
男同士の挨拶みたいな感じで返すと、
葵はふっと笑った。
「男みてぇだな」
「悪い?」
「いや」
葵は肩を竦めてみせて笑った。
そしてベンチの隣をぽんぽんと叩いて座るように促す。
それに素直に従って、横に座ることにした。
隣に座ると、葵は空を見上げた。
「いい天気だな」
「そうだね」
「なんかいい匂いすんな。髪か?」
「よく気付いたね。青りんごなの」
「へぇ」
本当、よく気付くな。
男ってこういうことに疎いはずでしょう?
「早速で悪いけど、今日この後母さんが来るから、
話合わせてくれよな」
「なっ……はぁ?
あんたいきなりすぎるんだけど」
「だから悪いけどって言ったろ。
ほら、さっさと行くぞ」
葵が立ち上がって私の手を取る。
とりあえず立ち上がったけど、聞いてないよ。
いきなり親に会わなきゃいけないなんて、
どう考えても難易度高すぎるでしょ。
「ちょっと待って。私嫌なんだけど」
「はぁ?昨日約束したろ」
「だからって、急に言われてもね……」
「大丈夫。俺の母さん、ちょろいから」
そういう問題じゃない。
話の通じない奴だな。
私が言っているのはそういうことじゃないのに。
葵は私と点滴を引きずるように連れて面会室へと入った。
部屋の中には綺麗な女の人がいて、
私を見るとびっくりしたように目を丸くさせて、
それから柔らかい笑みを見せた。
「母さん。こいつ、茉莉」
「は、初めまして。水野茉莉です」
「……あらあら、この子が彼女さん?」
綺麗なこの人が葵のお母さん?
葵のお母さんは高く澄んだ声で小首をかしげる。
うちのお母さんと大違い。
とても若く見えたし、素敵だった。


