「初めまして。紫音高等学校から編入してきました、葉月桜夜です。よろしくお願いします。」

教壇の上で一人の女の子がそう挨拶した。

「え…?」

クラスの中が不自然にざわめく。

当の本人は気づいていないようだけれど、あたしも心の中では驚いていた。

星花学園に編入するというのは、並大抵のことではない。

しかも、1番レベルの高いAクラスへの編入なんて、聞いたこともなかった。

真っ直ぐの長い黒髪と澄んだ大きな瞳を持った彼女は、どんな子なのだろう。

あたしは、ホームルームが終わってすぐに彼女の所へ向かった。

「ねぇ!」

「え?」

読みかけの本から顔を上げて、彼女はあたしの方を向いた。

少し驚きを含んだ真ん丸な目。

「あたし、杜若理乃。よろしくね。あたしのことは理乃って呼んで。」

そう言うと、彼女はにこっと笑った。

「よろしくね!私のことは、桜夜って呼んでくれると嬉しいな♬︎」

ふわりとした柔らかい笑顔。

大人しそうな見た目とは裏腹に明るく可愛い声。

あぁ、これならすぐクラスに馴染むかな。

あたしが声をかけたことで、周りの女子達もパラパラと桜夜に声をかけ始める。

男子は少し遠巻きにその様子を見守っていた。

すると、ふとその中の1人と目が合った。