私は夢を見ていた。

夢と言うよりは、ずっと前の記憶。

私がまだ、幸せだった頃の。


『桜夜ちゃんっていうの?よろしくね!』

『うん、えっと、あなたは…?』

『うちは…』

小学校1年の時の記憶。

1番仲のよかった女の子が、私の目の前に立っている。

『ねぇ桜夜ちゃん一緒に遊ぼ!』

『うん!』

鮮明に浮かび上がる、彼女の姿。

私に似ている、ストレートの黒髪。

勝気そうな表情。

ほんの少し、私より低かった身長。

くるりと回る度にふわりと香る、あの香り…

その時、目の前の風景が一気に変わった。

『よーい、どん!』

3年生の運動会の徒競走のシーン。

彼女は1位、私は2位だった。

『また負けたっ…』

涙をこぼす私を、彼女は慰めてくれた。

『来年は桜夜が1位になれるよ。』

『…ほんとに?』

『うん!本当!』

ハンカチを渡してくれる彼女。

可愛いクローバーの刺繍が入っているハンカチ。

私はそれを受け取って笑顔を見せた。

『ありがと、洗って返すね…』

『…うん。』

今思えば、彼女は分かっていたんだろう。

私が次の年に、本当に1位になれることを…。