14話「話してくれないくせに」






 気づくとウトウトとしてしまっていたようで、夕映は本に囲まれた部屋にあるソファで、丸まって寝ていた。
 心地いいのは、懐かしい部屋にいるからだと思っていた。けれど、それは違った。

 いつの間にかに隣に座っていた斎が、頭を撫でていてくれたのだ。
 きっと、それが気持ちよくて彼がいるのに寝てしまっていたのだろう、と夕映は思った。
 

 先ほどまで彼のしたことを怒っていたはずなのに、気づくとその気持ちが落ち着いてきていた。

 少し体を動かすと、起きたことに気づいた斎が「あぁ。起きたのか。」と言って、頭に触れていた手を離した。それが何故か寂しくて、夕映は胸がギュッと締め付けられる思いがした。


 「ごめんなさい。寝てしまって………、どれぐらい寝てた?」
 「30分も経ってない。」
 「そっか。」


 夕映は、ゆっくりとベットから起き上がり、彼を見つめた。彼はシャツに細身のズボンを履いてラフな格好をしていた。頭にはタオルがかかっており、少しだけ濡れていた。きっと、乾かさずにここに来てくれたのだろう。


 「その本見たいなら貸す。……帰るか?」
 「………どうして、南にあんな事を言ったの?」


 ソファから立ち上がろうとした彼のシャツを指で引っ張り、斎を引き留めた。
 そして、ずっと聞きたかった事を彼に伝えたのだ。

 すると、彼は少しだけ驚いた顔を見せたけれど、すぐに「……またかよ。」と言って、小さく息を吐いた。