そう言ってため息をつく斎だけど、夕映にはどこか楽しそうに見えた。
 

 「でも、まぁ……そういう所は、おまえらしいな。」
 「………そう、かな。」
 「あぁ。………じゃあ、今度酔ってない時だったらいいんだよな。」
 「そ、それは………。」
 「楽しみにしてる。」


 そういうと、斎はこちらに近づいてきて、夕映の手を取った。
 すると、手のひらに何かが置かれたので、夕映は手を見るとそこには、カードキーが置かれていた。


 「これ……。」
 「今から帰るの危ないだろ。それに、おまえと泊まれないなら、ここのホテルに泊まる意味ないし。……おまえにやるよ。」
 「え、でもここってスイートだよ………。」
 「あと、これな。」


 夕映の言葉を無視して、斎はそう言って、スーツのポケットから名刺を1つ取り出して、カードキーの上に重ねた。


 「それ、オフ用の連絡先書いてあるから連絡しろ。じゃあ、またな。次に会うとき、いろいろ期待してろ。」


 ニヤリと笑い掛けると、斎はさっさとエレベーターに乗っていなくなってしまった。

 夕映は彼に何も言えないまま、ただカードキーと名刺を握りしめながら、閉まったエレベーターをしばらく眺めるしか出来なかった。