「おい、夕映?」
 「あ………斎。」
 『じ、事情はわかったわ。気にしなくていいから。また、明日ね。』
 「あ、南っ!………切れちゃった。」


 いつもと様子が違う南を心配して、夕映はスマホの画面を見つめた。
 すると、斎も心配して「悪い、電話中だったんだな。………大丈夫か?」と近寄って来てくれた。


 「南に電話したんだけど。何だか様子がおかしいよう気がして。私が連絡もなしに休んだからかな?」
 「それぐらいで、怒る奴じゃないだろ?」
 「そうだよね……。」
 「明日、ちゃんと話せばいい。」
 「うん、そうしてみる……….。」


 斎の言葉を聞いて、「大丈夫だ。」と思うようした。きっと考えすぎだろう。電話越しだと、相手の顔がみれないから気持ちが伝わってこないだけなはずだ。
 気にしすぎは悪い癖だ。

 そう思っていたけれど、シャワーを浴びたり着替えをしたりしながらも、先程の電話の越しの南の声を忘れることが出来なかった。




 その後、遅めのブランチをとり、夕映と斎は約束通りに買い物へと出掛けた。
 パーティーのドレスを買いに来たので、女性もののドレスやファッションショップに行くと思っていた。けれど、連れてこられたのは、予想外の場所だった。


 「ねぇ……斎、本当にここでいいの?」
 「あぁ。ここだと俺の担当もいるし、ちょうどいいだろ。」
 「でも、one sinって超高級ブランドだよ?」
 「俺は働いてるから大丈夫だ。」
 「私は無理だよ………。」


 斎が夕映を連れてきた場所。
 それは、高級ファッションブランドのone sinと言われるお店だった。数あるブランドの中でもハイブランドと言われており、夕映もなかなか手が届かない。
 その店で、大学生の彼がすでに担当スタッフがいるというのだからさすがだと夕映は思った。

 綺麗な店員さんに案内されてVIPルームに行くと、斎が話していたのかすでにたくさんのドレスが準備されていた。