教室に着くとすでにほとんどの生徒が席に着いている。
(私の席……どこだ!?)
空いている席が複数あり、正直自分の席がどこにあるか分からない。私が戸惑っていると見知らぬ女の子に声をかけられた。
「苺恋ちゃん。席、こっちだよ。」
「ん?あ、ありがとう……。」
普段家族と優真先輩以外との会話がなかったため、ぎこちない返事しか返すことが出来なかった。
私は気まずい気持ちを押し殺してその子について行く。
「はい。ここだよ!」
「ありがとう……」
親切に私の席を教えてくれたことにお礼をして席に着く。
女の子は私の後ろの席に座ると私に声をかけてきた。
「まさか高校でも同じクラスなんてびっくりだよ!」
「へ?」
そういえばこの子は私の名前を最初知っていたし、同じクラス……?どうしよう。興味がなくて知らなかったなんて言いにくい……。
私が困っていると、女の子はニッコリと笑みを浮べた。
「私の事覚えてないよね〜!私は国島歌恋。苺恋ちゃんと同じクラスだったんだけど……。勉強で忙しそうだったもんね」
怒ってはいないみたいだ。よかった……。
私はほっと息をついて笑みを浮かべる。
「ごめんね。これから仲良くなれたら嬉しいな。」
どのみち高校からは青春を謳歌する予定だ。それに知ってる人もいないし、仲良くして損は無いだろう。
「うん!あ、苺恋(いちご)って呼んでいい?」
「いいよ。なら私も歌恋(かれん)って呼ぶね」
今までこんな呼び捨てをするような仲のひとがいなかったから嬉しい。
私がそんなことを思っていると歌恋は思い出したように言った。
「そういえば、苺恋って絵が好きなの?」
「うん」
本当はそこまで絵が好きな訳では無い。好きなのはあくまでも優真先輩だ。
「私も好きなんだ!」
そういって歌恋は鞄の中から雑誌を取り出した。
「えっ……これって」
私は言葉を失った。
「じゃーん。同人誌です!」
表紙では男の人同士が抱き合ったイラストが描かれている。歌恋は腐女子なのだろうか。
「こ、こんなの学校で堂々と出しちゃダメだよ…!」
私がコソコソとしまうように促すが、歌恋はニコニコしたまま、ページをめくりはじめる。
「これ、私が描いたんだ。」
「へ?」
よく見てみるととても綺麗なイラストだ。これを歌恋が……。すごい、と素直に関心する。
「歌恋、イラスト上手なんだね。休日に描いたりするの?」
「まぁ、基本夜だけどね。あ、苺恋は休日何してるの?」
私はギグっと肩を揺らした。
私の休日……か。