「"無垢"!?」

『さよなら……』

声だけが柔らかに響き、貝殻もいつの間にか消えていた…。

「紫音!紫音!」
「…兄ちゃん…泣かん…でくれ。」

「紫音!成功したぞ!聴こえるか!?」

烏丸の腕の中で、俺の声を聴いた紫音は微かに微笑んだ。

「ありがとうな…皆。アタシはもう、眠る。」

「俺が治療する!」
櫂が手を伸ばしたが、その手を紫音は止めた。

「やめて。元々今日死ぬ事は知ってたんや。兄ちゃんを…よろしく…。」

そう言うと、涙を一筋零し息絶えた…。

「紫音……。」

烏丸の泣き声が、教会に響いた…。
再会したのも束の間の生命だった。

「ん……。」
「ゆめ!?起きたか!?」
「……成功、したんだね。渉くん…」

廣瀬は彼女を抱きしめた。

紫音の死の悲しみと引き換えに、

俺達の世界には、平穏を取り戻したのだった…。

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