「それについては……申し訳ないと思っている」

「じゃあ、あのくらいの我が儘に付き合ってやれよ」

「結果傷つけることになってもか?」

……そうだ。
提督さんがその気がないなら、どうしたって大原さんが傷つく。
それもかなり痛手だ。

「だから、納得させればいいんだろうが。すずな嬢が雪江を完膚なきまでに叩きつぶ……いや、もうどうしても敵わない、っていうくらい負かしてやれば問題ないんじゃないか?」

待って?
全て押し付けるのやめて?頼むから。

「簡単に言うな!!すずなは……すずなは……」

提督さんは熱く私の方を見つめ、言葉を詰まらせた。
その言葉の先、何を言おうとしたのか。
すずなは………アホだ?
すずなは………バカだ?
すずなは………………いや、もう悲しくなってきたからやめよう。
私が頼りないことがわかってて、提督さんはこの勝負に反対してるんだ。
きっと、負けると思ってる。
…………………………………。
それはそれで腹立つな。
やってもいないのに負けるって決められるのは……うん、嫌だ。

「提督さん。勝負は勝負です。私も手を抜いたりはしません。全力で頑張りたいと思います。だから、提督さんも腹を括って下さい」

「腹を……括る??」

不思議そうな提督さんに私は言った。

「私が負けたら婚約は解消して下さい」

「……は………何を………君は何を言ってるんだ!?」

「だから言ったじゃないですか!勝負は勝負なんです。少なくとも大原さんに捨身で挑まれた以上、私もリスクは追うべきでしょう??」

私は普段あまり出したことのない大声を出した。
こんなに必死なるなんてバカげてる。
御姉様のおふざけの提案を、笑ってこなせばいいだけなのに。
良くわからない感情に支配されて、自分でも止められないなんて。