「まぁまぁ、勝つ気でいらっしゃるの!?おめでたい方ね。私が、全てにおいて勝っているのをお忘れ?」

お忘れというか知りませんけど、何か?

「算術は私、優をとっておりますの。聞くところによると、すずなさんは良だとか。ふふっ、ピアノも私はA評価でしてよ?すずなさんはどうかしら?剣道も確かすずなさんより段が上なのではないかしら?」

だから、知らないってば!

「例えそうだったとしても、必ず勝つとは限りませんよね」

という私に、大原さんは高らかに笑って言った。

「ふふっ、勝ちますわよ。絶対に……だって私は………」

「何をしているっ!!」

そして、バァンと扉が開き現れたのは提督さん。
また?もういい加減にしないと扉壊れるよ。
びっくりしません、もう3回目だし。

「すずなに何の用がある!?いい加減にしないと………」

恐ろしい顔の提督さんは大原さんに掴みかからんとする勢いだ。
それを、間一髪止めたのは御姉様。
素早く間に入り込んで提督さんの腕を掴んだ。

「待て、鷹人。ここは私に任せてもらおう」

「姉さん……大体姉さんがついていながらどうしてこんなことになるんだ?ちゃんと頼むといったろう?」

苦々しい顔の提督さんとは対照的に、御姉様の顔は晴れやかだ。
金が入る算段がついたから心に余裕が出来たのか……?
御姉様は提督さんに恫喝され、戸惑っている大原さんを椅子に座らせると、提督さんに向かって文化祭興業の詳細を説明した。
そして、話が進むにつれ提督さんの顔はみるみる青ざめて行ったのだ。

「そんなことは許さない」

「なんで??」

そう会話を交わしながら提督さんと御姉様は、部屋の外に移動した。
内容を私達に聞かせるのを避けるためか、声のトーンも落とされている。
……………一生懸命耳を澄ませてみるけど、たまに聞こえる提督さんのため息と、御姉様の能天気な笑い声しか聞こえない。
そして、座った大原さんはとてもさっきと同じ人物と思えないほど、覇気が感じられなかった。
提督さんにあんな態度をとられたことがよっぽどショックだったんだろうか。