そして、あとはサキちゃんが来るだけになったのだけど。
これがねぇ。
また厄介なんです。

「おはようございまーす!!お姉さん!」

はっ!き、来た!

「おはよう!サキちゃん!……えっと、愛田さんおはようございます!」

くるりと振り向き、まずサキちゃんにご挨拶。
うん、今日も素敵な笑顔!別嬪さんだよ!
そして、サキちゃんママにも挨拶するけれど……。

「………………………」

無視である。
初日からずっとこの調子で、私が話しかけても全く空気状態だ。
何があったのかサキちゃんには聞けず、仕方なく御姉様に相談すると、どうやらすずなお嬢様、サキちゃんパパに色目を使っていたとか!!
………あんまりだ……すずなお嬢様、子供のいる家庭にまで手を出すとは最低だよ!!
そして、最低の女は(望んだ訳ではないけど)今、私だからね!!
というわけで、この仕打ちを甘んじて受けているわけなのです。

「しょうがないわねぇ……お姉さんは前のこと全部忘れちゃってるのにね?ママったら、ほんと、陰険でうじうじ蛆虫なんだから」

うじうじ蛆虫!?
何それ、流行ってんの?
その言葉に、サキちゃんママはカッと目を見開き、また無言で威圧する。

「やだやだ、女の嫉妬、こわーい。サキはママみたいにならないもんねー!さ、お姉さん行こ??今日はピアノを教えてくれるお約束よ!」

サ、サキさん?
あの、ちゃんと見て?
あなたのママ、めちゃくちゃ怖い顔してるよー!?
これ以上怒らせないで下さい!!
結局サキちゃんママ、その鬼瓦のような顔のまま、凄い勢いで去って行った。
あー………和解までの道程はまだまだ遠い。