「お姉さん、アバズレでしょ??」

…………………。
…………………。
聞き間違いかなぁ?

「え?今なんて?」

「ア・バ・ズ・レって言ったの!」

アバズレ……人擦れして厚かましい人。身持ちが悪いこと。またそういう女。
うん、ビッチより酷いね……。

「どうしてアバズレだって思うの?」

私は大人だからね!
この状況でも冷静に対処するよ!

「お母さんが言ってた!今日から学園にアバズレが来るから近寄っちゃダメだって!」

「そ、そうなの……?へぇ……そうなの……」

大人……だからね……。冷静に、ね。

「で、アバズレって何なの??」

ボスは無邪気な顔をして首を傾げた。
知らんのかーい!!

「え?知らないの?」

「うん、わかんない。何で近寄ったらダメなのかな?お姉さん、綺麗なのにね」

「…………綺麗?……ありがとね」

ううっ、子供のくせに心得ている!
お姉さん、嬉しくて泣いちゃう!
いや、泣いてる場合じゃない。
なんとか、アバズレの名誉を回復しなくてはこれから仕事がどんどんやりにくくなる。
ここは一つ。

「ねぇ、みんな?お姉さん初めてで何にもわからないんだ!ここのこと教えてくれると嬉しいなぁ!教えてくれたらとってもいいものあげるよ!」

私の「とってもいいもの」発言に、子供達の目がキラキラと輝いた。
うんうん、わかる。
そういうのに弱いよね、君たち。

「何?何くれるの??」

と、子分1が言った。

「ふふふー、何でしょう?教えてくれないとあげないぞー!」

「僕が教えたげるっ!」

と、子分2も叫ぶ。

「私も私もーーー!」

よっしゃーー!掴んだーーー!
これで今日は楽しく仕事出来そう!
わらわらと回りに群がる子供達の真ん中で、私は満面の笑みを浮かべ、心の中でガッツポーズを取った。