「………えと、面接に行けるような……スーツ……というか……あの、ちゃんとした服が一着……欲しいんですけど……」

最早私の視界には、提督さんの軍服の第二ボタンしか見えない。
距離感がおかしいことに、気付いてないのか、その変な距離のまま提督さんは答えた。

「あのクローゼットのは使えないか?」

「あーー、すみません、私には少し高価すぎて?」

嘘、ダサ過ぎてごめんです。

「そうか。いいぞ、どういった感じの……言われてもオレにはわからんな……明日仕事の帰りに冬島にでも付き合ってもらえ。オレのツケがきくから金の心配はしなくていい」

「いえ!給料貰ったらお支払しますよ!初任給で、えへへ」

初任給!!なんて素敵な響き!
バイトもさせて貰えなかったから、自分の稼ぎって何か新鮮よね?

だらしない顔で笑う私と対照的に、提督さんは何故か不機嫌になっている。
あ、視界には入らないけど、僅かに体が震えたのよ。
これ、怒ってる。たぶん。
何で!?

「君の服はオレが買う。女性に金を払わせるなんて冗談じゃない」

なんの拗らせ男子だ?
ここは男女平等じゃないのかな?
うー、申し出はありがたいけど何か違う気がするよ?

「自分の物は自分で買います!私、ちゃんと一人で生きて行けるようになりたいんです!!」

そう、いずれは提督さんからも離れなきゃだし、どこで暮らすにしても何でも一人で出来るようにならないと。
何でもかんでも面倒みてもらってたら身にならない。
そんな私の意気込みを、提督さんは無言のまま力押ししてきた。
つまり……抱き締めてきた!!