「お嬢様、着きましたよ。ここが学習エリア、楸学園です」

少尉さんが指差したところには、学校らしくない、とても無機質な外観の扉がある。
その扉を開けて中を見ると、意外と室内は明るかった。
廊下の壁はクリーム色で優しく、色とりどりの画用紙に書かれたたくさんの絵が飾られている。
小さな子供達が書いたらしいその絵は、とても大胆なタッチで生命力に溢れていた。

「因みに私もここの出身ですよ」

「へぇそうなんだ!?じゃあ那由多の人ってみんなそう?提督さんも?あ、ちょっと待って……楸って……」

少尉さんはふふと笑った。

「そうです。ここは提督の実家みたいなものですかね。今は提督の御姉様が理事長をなさってます」

なるほど。
それで、すぐに口利いてもらえたのか。
コネってやつだよね。

少尉さんはズカズカ中に入っていき、すれ違う人(女の人ばっかり)に、にこやかに挨拶した。
私もそれに倣い頭を下げるけど、やっぱりというか……反応が厳しい。
通りすぎるたびに陰口が聞こえて、もうこの時点で登校拒否になりそう……。
狭く見えた学園内は案外広くて、奥に行くほど小さな子供が見える。
出口付近に中高等部の教室、奥に初等部、保育園の子になっているみたい。
安全の為かな?
勝手に出ていったりしないようにかもしれない。
その保育園の子供がいる部屋のすぐ横に《理事長室》と書いたプレートがあった。
少尉さんはその前でピタッと立ち止まると、身なりを整え扉をノックする。
もちろん私も身なりを整え……るほどの身なりをしていなかった!
提督さんのシャツとパンツじゃん!
もっとちゃんとしてくれば良かったよ。
何も持ってないけど……。

「どうぞ」

私が服についてあれこれ悩んでいると、部屋の中から低い声が聞こえた。
思わずビクッと震えてしまうと、隣の少尉さんも同じように震えていた。
ふぅと一息ついた少尉さんは、まるで命に関わる作戦を遂行するかのように扉を開ける。
続いて後ろから入った私は、理事長さんの顔をみて唖然としてしまった!
提督さんそっくり!?なとても男前の女性が、立派な机の向こうに座ってこちらを見ている。
美人だけど、怖い……顔が……怖いよ……。