「申し遅れました、私、冬島笙子と申します。楸提督の部下で少尉であります。これから、お嬢様のお世話をと仰せつかっておりますので良しなに!」

冬島少尉さん、か。
王子でも良かったけどこれからは少尉さんと呼ぼうかな?
こちらこそー、と私が言うと、少尉さんは機敏にそして優雅に敬礼をした。
その姿がとても美しくて、少尉さんが去ったあともポヤンと口を開けたままでしたよ、私……。
だらしなく開いた口を閉じたあと、自分が提督さんのシャツをまだ着ていることに気付き、急いで自分の服を探したのだけど。
そういえば私の服って確か巫女装束だったよね?
あれは一体どこに!?
私は服を探そうと部屋を荒らしまくった。
部屋の中には大きなクローゼットが2つあり、そのうちの一つを開けると男物のシャツや何着かの軍服、丁寧に畳まれた下着類が店のディスプレイのように置かれていた。
そうか、この部屋、提督さんの部屋なんだ。
ん?な、なんか衣類からいい匂いがするっ!?
私は思わずその一つを掴んで嗅いだ!
フェロモン……っていうの?凄く女を誘う何かが出てる気がする!!
などと悶えていると、再び扉が叩かれた。
はいはい少尉さんね!と、軽く返事をしてしまい、その後私は少し焦った。

「調子はど……う……」

「ふぇっ!?」

扉付近で固まる提督さんと、クローゼットの中で衣類を嗅ぐ変態。
現行犯で捕まる犯罪者ってきっとこういう気分なんですね。
この場合、罪状は何だろう……。

「何をして……る?」

「服を……自分の服を探してまして……あの、暫く来れないって……」

どうか匂いを嗅いでたことには触れないで下さい。
私はこっそりと提督さんの服を後ろ手に隠した。

「ん?ああ、少し時間が出来たから………服か?……そうだな。いつまでもその姿では外に出られないな」

「私の着ていた服はどこですか?」

「助けた時のか?あれは生地が分厚くて、乾くのに時間がかかっている。もしかして、あの服を着る気か?動きにくそうだが?一体どこであんな服を……」

それは私だってそう思いますよ!
ですけどね、他にないんだからしょうがないでしょう!?
と、ぷうっと頬を膨らませると、目の前の提督さんが焦ったように目を泳がせた。

「いや、すまん………えーと、服なら……確かここに……」

と、開けてなかったクローゼットを開けて見せる。
そこには、びっちりと並んだいろんな色のワンピースが所狭しと吊られていた。