「お前、さっき言ったことを忘れたか?セリと呼ぶなといったろう?」

「は……あ、あ……うん」

「次はないぞ」

「ねぇ、だったらなんて呼べばいいんだよ?」

「桜庭さん、だ」

「サクラバさん……」

フレディは暫く呆然としながら、「サクラバさんサクラバさん」と連呼した。
私はコッ○リさんか?
呼び出されるオカルトのアレみたいだよ。
どうぞお越しくださいって、言っちゃう?

「すまん、アホが話の腰を折ってしまったな」

「あ、いえ………その、誕生日でバレたというわけですよね」

「それと、記憶喪失なのに、自分の誕生日だけ覚えているのは変だろう?」

迂闊………。
これは、フレディに笑われても当然だわ。
そんなことにすら気づかなかったなんて、ほんとバカ。
あれ?でもその話の後、例の提案があったのでは?
偽物と知ったのにどうしてこんな茶番に付き合ってくれたの?
私の表情に、提督さんも気付いた。

「君が、すずなではなく別人だと確信したオレは、改めて君に……セリに側にいて欲しいと思ってしまった。だが、何か訳があってすずなのふりをしているんだったら、それがバレた時、セリは婚約者という立場にいてくれないのでは、と思ったんだ」

提督さんは更にぎゅうぎゅうと手を握り、ぐいぐい近付いてくる。

「だから黙っていた。悪いとは思いつつ、居心地の良さについ……」