《いたいんだよぅ!!もう、だれかなんとかしてよぉーーー》

という大音響とともに、ブォンと走る長い…………何これ?
白く長く太い何かに、丸いポツポツがついていてビュンビュンと揺れている。
………これ、どこかで見たことあるよ。
でも明らかにサイズがおかしいけど。

「セリっ!!後ろに!後ろに下がって!!」

フレディが大声で叫び、私を引っ張ってソーラーパネルの下に身を隠した。

「フレディ!これが海獣!?」

「そう。第一海域の悪魔と呼ばれてて、腕……というか足?が8本……つまり……」

「タコ!!」

道理で見たことあるはずだわ。
白いのは足(触手)で、それに付いてるポツポツしたものは吸盤なんだ。
大きさは異常だけど、言われてみればもうタコそのもの。
ただ、本体は海の中なのか、全く目視は出来ないんだけど。
触手だけが、甲板を掠めて飛び回り、たまにソーラーパネルに当たって破損する……というのを繰り返している。
運がいいのか、最初の大きな揺れ以外は船に接触はないらしく、軍部の方も攻撃を控えているみたいだった。

《あしが……あしがいたいよー》

「足が痛い……?フレディ、足が痛いって言ってる」

「やっぱり……セリは海獣の言ってることがわかるんだね。幽霊の声は、海獣だ」

「どうやらそうみたい。シェルターで聞いたのと同じ声だもん」

「そうか。で、会話は出来そう?」

「会話………」

私は少し考え込んだ。
海の生き物と、話をするのはお手のものだけど、こんな大きなものと話したことはない。
しかも、この暴れまわってる状況で私の声が届くのかどうか……。