「すずな」

その直後、背後から声を掛けられ更に飛び上がるほど驚いた。
飛び上がるほど……いや、実際飛んだよ……。

「ひっ……て、提督さん……びっくりしましたよ……」

「ああ、悪い。先に一言謝っておこうかと思ってな」

「謝る?何かされました?私?」

「いや、うちの身内が……強引で済まない。本当ならこの試合はなかった筈なのに、アイツの我儘に付き合わされて……」

なるほど、御姉様のことか。

「いえいえ。良く考えたら、学園に寄付がないと私のお給料出ませんもん。これもお仕事だと思ってますよ」

「……そうか……ありがとう」

ニッコリと微笑んだ提督さん。
なんて可愛いんでしょう。
般若じゃない時は春の陽だまりのようですね。
………ん?あれ?なんか背中からブリザードが吹いてくるような?
前は春風、後ろはブリザード。
一体何だ?と思い振り向くと、あの、怖い軍人さんが鬼の形相でこちらを見ている!!
提督さんも般若になるけど、この人は鬼かよっ!!
そして、めちゃくちゃ怖いよ、ねえ、どうして睨むのよぉ!!

「……あいつには近寄るなよ」

「へ?」

私の視線の先を、提督さんは辿ったらしい。

「えと、あれ、誰なんですか?軍部の人ですよね?」

「………ああ。結城大佐だ。いいか、何か言われても無視しておけよ。何かあったらすぐオレに言え、わかったな?」

「…………はい」

とりあえず、はいって言ったけど……気になるなぁ。
でも、提督さんが警戒するということは、もしかしてすずなお嬢様のお相手の一人なのかも。
うん?でも軍部の人間には嫌われてるんじゃなかったっけ?