「大原さん……」

私達はまた握手を交わそうと歩み寄った……だけど、その直後!
一際大きい声が辺りに響いたのだ。

「待てぃ!!その決断に物申すっ!!」

御姉様はマイクの音量をMAXにしたまま、大声で叫んだ。
お陰で、会場内はハウリングの嵐。
あああーー耳がーー!耳がぁーー!!
観客も審査員も私も大原さんも……つまり御姉様以外の全ての人が耳を塞いだ。
キーーーンという不快な音に全員が耳を塞ぐ中、何事もなかったように御姉様は言った。

「何二人で決めてるんだ?ん?興行主は私だぞ?」

興行??主?

「困るじゃないか……そんなに簡単に仲良くなられてもな。もっと派手にぶつかって貰わないと、観客が喜ばないぞ?(寄付が貰えないぞ!)」

何故か御姉様は、こそこそと小声になり、私達の肩をぐっと引き寄せた。
一応括弧にしてますけど、その心の声、漏れてるからね……。

「ここは一つ、仲の悪い振りをして最後の剣道勝負をしないか?ん?悪いようにはせんぞ?」

悪代官!?
鶫殿、お主も悪よのぅ……なんて言ってる場合か!?
守銭奴!金の亡者!!
こんないい場面で良くそんなこと言えるよね!?
………なんてこと……言えると思います??
怖いですよぅ、くすん。
悪代官顔負けの御姉様は、反対意見を聞く気はない。
すごい力で首根っこを掴まれた私達はもう、蛇に睨まれたカエルのようだった。

「つ、鶫様……あの、ですが私……もう……」

おおっ!勇者がいます!
大原さん、御姉様にご意見を!?
と、思ったのも束の間だった。

「ああん??何だ?雪江?」

「あ……………いえ………何でもありません」

御姉様のドスの利いた声に、大原さんは負けた。
アウトレイジな女VSハリウッド女優………。
勝者、アウトレイジ鶫!!
5秒KOとは情けない……なんて言わないよ絶対。